駒ヶ根の町はずれ、中央アルプスの雄大な景色を背に、ひっそりと佇む小さなカフェ『風のテラス』がありました。このカフェの自慢は、近くの農園で採れた新鮮なリンゴを使った焼き立てのアップルパイです。
ある日の午後、テラス席のテーブルに、まだ幼い男の子が一人で座っていました。男の子の手元には、まだ一口も手をつけていないアップルパイが置かれています。しかし、男の子の目はパイではなく、山の緑がきらきらと光る空のほうに向けられていました。
「あ、雲の形がうさぎさんみたい」
男の子が小声でつぶやいた、その時です。ふわりと心地よい風が吹き抜けました。テーブルの上の真っ赤なリンゴが、ふわりと宙に浮き上がったのです。まるで生きているように、リンゴは男の子の鼻先でくるりと一回転しました。
驚いて目を見張る男の子をよそに、リンゴはテラスを飛び出し、空に向かってゆっくりと上昇していきました。
「ああっ!」
男の子が慌てて立ち上がると、リンゴは空中でピタッと止まりました。そして、リンゴの中央がパカッと割れて、中から小さな金色の羽が生えてきたのです。空飛ぶリンゴは、まるで「おいで、おいで」と手招きするように、キラキラと輝く光の粉を散らしながら、近くの森のほうへ飛んでいきました。
男の子は思わず、そのリンゴを追いかけて森の中へ駆け出しました。木漏れ日が揺れる小道を抜けると、そこには見たこともないほど大きな、古いリンゴの木が立っていました。
その木の周りには、森の動物たちが集まっていて、空から降りてきたリンゴを囲んで楽しそうに踊っています。空飛ぶリンゴは、一番大きな動物……まるで森の主のような、もふもふとした大きなクマの頭のうえに、ちょこんと乗っかって止まりました。
「待ってたよ」
クマが人間の言葉でそう言ったように見えた瞬間、リンゴは光の粒となってパッと消え、森中に甘いリンゴの香りがふわっと広がりました。その代わりに、クマの大きな手のひらには、湯気が出ている焼き立てのアップルパイが乗っていました。
「さあ、一緒に食べよう」
動物たちが一斉に手拍子を始めます。男の子が恐る恐るパイを一口食べると、口いっぱいに広がる優しい甘さと、サクサクとしたパイの食感に、さっきまでの寂しさがすっかり消えていきました。
気がつくと、男の子はいつの間にかカフェ『風のテラス』のテラス席に座っていました。目の前には、さっきのアップルパイがまだ美味しそうな湯気を立てて置かれています。
ふと空を見上げると、中央アルプスの山頂に、ほんの少しだけ夕日が当たり始めていました。男の子はふふっと笑い、自分のフォークを手に取って、アップルパイをひとくち大きくパクリと食べました。
「ごちそうさま!」
男の子は心の中で、森の動物たちと、空飛ぶリンゴにそっと呟きました。それ以来、駒ヶ根の風が吹くたびに、町の人たちはふわりと甘いリンゴの香りがするような気がしたのでした。
絵、文ともにAIで生成

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